インタビュー

内閣府 地方創生推進室

言語化できていない事象を的確に分析し定義する
調査で見えた、官民共創支援組織の想いと情熱。

内閣府 地方創生推進室

出生率の低下によって引き起こされる人口の減少に歯止めをかけるとともに、東京圏への人口の過度の集中を是正し、それぞれの地域で住みよい環境を確保して、将来にわたって活力ある日本社会を維持することを目的として、地方創生の推進に取り組む。 「地方創生テレワーク」として会社を辞めずに地方に移り住む「転職なき移住」、ワーケーションなどによる「関係人口の増加」、東京圏企業による「地方サテライトオフィスの設置」などを推進し、都市部から地方への人の流れを加速させ、地方の活性化に貢献している。

インタビュー:
内閣府 地方創生推進室
インタビュー: 内閣府地方創生推進室 田中様
株式会社カルティブ 竹村、北田

企業と地方自治体の結びつきを誘発する。
その方法を模索するための調査プロジェクト。

− まず、田中さんのお仕事の内容を教えてください。

田中
私は内閣府地方創生推進室と、内閣官房新しい地方経済・生活環境創生本部事務局という部署に所属しています。内閣府地方創生推進室では、東京一極集中の是正を目指し、地方に人の流れをつくるため、地方創生テレワークを推進しています。具体的には、東京圏の企業で働く人が地域でサテライトオフィスを使ってテレワークをしたり、あるいは、地域に住んだまま地域外の希望する仕事に就く方を増やしていくために、普及啓発や機運醸成を図っているというのが私の職務です。

地方でのテレワークを実現する方法にも種類があります。一つは、企業が地域で自らサテライトオフィスを設置すること。もう一つは、企業が拠点を新たに作らなくても、自治体が整備したサテライトオフィスを活用していただくことです。サテライトオフィスの整備についても、内閣府で支援しています。テレワークを行うこと自体を目的としているのではなく、地方に人の流れを作っていくことを大きな目標として掲げていて、そのための一つの手段としてテレワークを活用するということを推進しています。

ー このプロジェクトは始まってからどれくらいの期間が経っていますか?

田中
事業の開始は令和3年度です。事業の開始当初より小坪さんと池田さんにずっとこれらのビジョンについて共有させていただいて、いろいろなディスカッションを経て、施策のアイデアをいただいていました。業務でかかわるというより、問題意識をお伺いしながら、我々が実現したい政策などについてお話をさせていただいていました。その後、2023年の秋にいわゆる一般競争入札で調査事業の公募をかけた折、手を挙げてくださって、ご提案をいただいたカルティブさんに調査業務を委託させていただくこととなりました。

ー カルティブの最初の印象をお願いします。

田中
着任して一番最初にお会いしたのは池田さんと小坪さんで、とにかく元気な人っていう印象を受けました。関心が本当にいろんな方向に向いていらっしゃいました。私自身の地方創生に関する知見がまっさらな状態の時に、企業版ふるさと納税を軸にしたお話、各地で頑張っていらっしゃる自治体の方だとか、それを支援したい企業の方の事例をたくさんお伺いし、私自身も制度に関する勉強をスタートしました。竹村さんにお会いしたのは事業の委託が決定した後でした。
竹村
私は田中さんと調査を一緒に行いました。一番最初に内閣府がやりたいことの全体像を捉えて方向性を示すのが池田と小坪の役割で、そこから事業にシフトするのが私の役割です。3月で調査事業が終了するまでご一緒させていただきました。「官民共創支援組織」という、首都圏の企業と地方の行政や産業が連携する時に中継ぎになる企業はどこにあるかということを調査しました。

官民共創支援組織は全国にある。
競合であっても目標と志は同じ

田中
この調査になる前提はテレワークの推進と普及啓発の一環としての情報発信でした。優良事例の表彰をしたり、そういった情報発信で地方でテレワークする人を増やしていこうといろいろ策を講じていました。コロナ禍でテレワークが広まったのをある意味うまく活用する形で、地方に人の流れをつくる手段として利用できないかと着目した背景があったんですが、コロナが落ち着いてくると出社に回帰して行くんです。コロナ禍におけるBCP対策以外の理由でテレワークをする目的をもっと見い出して、周知していく必要があると考えました。

様々な事例を調べ話を聞く中で、地方でテレワークをするということの動機の一つとして、その地域の人たちと関わりつつ、地域の課題解決をやりそれを自社のビジネスに結びつけるという流れが、企業と地方の双方にとって有意義だ、という結論に至りました。そして、それを推進する方法の検討が始まりました。

東京の企業と地方の自治体が相互に結びつくという機会は自然にはなかなか発生しませんし、機会があっても共通言語がない場合が多くあります。
そういったギャップを解消してくれる方々のご協力を仰げたらと思い、どこにいるのか?どういう役割を持っているのか?そして、その方々との連携方法について調査を進めました。

ー プロジェクトの経緯を教えてください。

竹村
まず、プロジェクトの開始と同時に各自治体へのアンケート調査を行い、知り得たパートナー候補の皆様をピックアップしました。12月以降はそれぞれの候補の皆様にヒアリングを繰り返し行い、3月に資料をまとめ、報告会を行いました。

全国的にも、エリア限定的にも、さまざまな専門分野での官民共創支援をしている組織を知りコミュニケーションを取る機会になったのはカルティブとしても刺激的でした。我々と同じ領域で活動していながらも、実証実験に特化している団体であったり、色々なアプローチを知ることができました。

私自身も学びが大きかったのですが、官民共創、地方創生という概念を言語化、可視化するという作業は非常に有意義でした。例えば「テレワーク」という言葉には「WEB会議」や「リモート作業」というイメージが一般的ですが、内閣府の勧める「テレワーク」はそこに「地域課題解決」など、それ以外のニュアンスを含んでます。そういった概念を共有し、イメージの差を埋めるために、どう資料化していくかを考えていました。

田中
プロジェクトの開始当初は、我々の想像するような官民共創支援組織がいらっしゃるのかすら分かりませんでした。調査の結果、そういう方々が思っていた以上にいらっしゃったということがわかりました。この獲得は大きかったです。それぞれのプレーヤーの特色だったり強みだったり、あるいは弱点だったりを横のつながりで補完しているケースも多くあります。競合他社であっても「その地域を活性化したい」という、目標と志を同じくする人たちとして前向きに認識されているのも驚きました。

私個人が取り組んで良かったと思う点は、日頃こちらで業務をしている中では知り合えない人たち、自治体、企業の方から直接お話を伺うことで、皆さんの想いや情熱といった「生の声」に触れられた点です。何に困っていて、どのように改善したかということを、体感として得られたのは本当に有意義でした。もちろん「どういうスキームか」であったり「どういうリソースが要る」という調査結果も大事ですが、そこに関わる人たちの意識を学べたのは良い機会だったと思います。

竹村
調査に協力いただいた団体同士で競合する分野もありましたが、それでも調査への貢献度はすごく高く、意欲的に取り組んでいただけました。
その理由は、なかなかこういう共創支援というまだまだ市場が顕在化していない領域をもっと世に知ってほしいというモチベーションだったものと推察します。今回内閣府がこの調査をすることで、自分たちの取組を世に知ってもらう機会として非常にポジティブに捉えていただきました。
北田
田中さんに質問させてください。私は、リモートでもできる作業を現場で行う企業の状況を度々目にします。企業の内部意識として、なかなかリモート推進ができていない現状の企業に対して、どういう働きかけを今後していくんでしょうか?
田中
まず前提に、テレワークを推進している省庁はいくつかあって、例えば通信を管轄している総務省は、ICTの利活用の観点で、テレワーク普及にかなり積極的です。厚労省においては、労働者のワーク・ワイフ・バランスの実現等の文脈で推進しています。

内閣府の場合は「地方創生」という題目があるので、テレワークを活用しながら地域に入ってもらうことが非常に大事なことだと捉えています。我々の考え方でいうと「テレワークを活用しないこと自体がものすごく問題だ」というわけではなく、地方に行ったからこそ、あるいは現場にいるからこそ生まれる新しい気づきも割と大事にしています。人と触れ合いながら地方を活性化する一つの手段として、テレワークを位置付けています。

新しいビジネスを地域で掘り起こすためにテレワークを活用するということも一つのインセンティブになりえたり、会社に良い人材を集める機会になりえたり、そういう可能性をお伝えしているところです。

机の上だけではない色々な経験で、
抽象的なものを具象化できた。

ー 本プロジェクトの調査結果を今後どのように活用する予定ですか?

田中
現在、数年続く普及啓発施策として地方創生テレワーク推進事業を行っています。
その中で今年の秋に、熱意のある自治体と企業を集めて、その中で官民共創を促す新しいコミュニティづくりを行います。このコミュニティの作り方の検討においては、カルティブさんにご協力いただきました。
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官民共創支援組織と一口にいっても本当に多種多様で、サポートされている領域、規模、地域も全然違います。民間の企業さんなので、そのキャッシュポイントがそれぞれ違うんです。なので、企業は「地域に何かしたい」、自治体は「この課題を解決してほしい」、この双方の期待は簡単につなげられるものではありません。その流れで今回は共創支援組織のカテゴライズという作業が発生しましたが、これは大きく前進しました。
それぞれの特性を理解した上で自治体の課題に対して効果的に関われる組織のマッチングも図る必要があり、その方針を提示しました。
田中
この取り組み自体が地方創生そのものに資するものだと確認できたのは、本調査の結果でもあります。しかし、コミュニティを構築して、自治体と企業をそこに集めるだけではうまくいきません。その事務局に官民共創支援組織の人たちにも参画していただくことで、両者のマッチングを促すことができ、テレワークを通じた関係人口や移住人口の創出に繋げられます。その連携させていただく組織の皆さんとして、昨年の調査で出会えた方々にお声かけできればと思っています。
竹村
カルティブはこのコミュ二ティ作りに関与はしませんが、次の担当の方にバトンを渡したという状態です。
今後は連携組織として同じコミュニティの中で引き続き応援していきます。
情報提供などでご協力できるものはご相談いただければと思いますし、企業の課題解決とマッチングが得られるようであれば、その企業もサポートさせていただきます。

ー プロジェクトを通して、カルティブに対してどういう印象をお持ちになりましたか?

田中
やっぱり現場をよく知っている方々だなという印象で、お話を聞いていてすごく参考になります。調査を委託させていただいて、コンサルティングやシンクタンクなどそれぞれの企業にそれぞれの強みがありますが、これまで言語化できていなかった事象を的確に分析し、定義をつくり、分類していくのは高いご知見をお持ちだからだと感じます。それは机の上だけではない色々なご経験の中で得られたものだと思いますし、それが今回の調査をものすごく支えました。

当初、カルティブといえば小坪さんのイメージで、レンジの広さとさまざまな方向への関心を感じていましたが、竹村さんは対照的に、ストレートに芯を捉えたお話をしてくださいました。我々が定義を持ち合わせていないものの評価軸を設け、抽象度の高いものを解像度高く具象化していただき、本当にありがたかったです。

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