インタビュー

GMOあおぞらネット銀行

「まずは自分の私利を捨て誰かのためになる」ビジネスモデル。
絶妙なバランスで成り立つ特別なプロジェクト。

GMOあおぞらネット銀行株式会社

あおぞら銀行とGMOインターネットグループ、GMOフィナンシャルホールディングスが共同出資して開始したネット銀行。通常のネット銀行サービスに加え、独自の特徴的なサービスを複数提供し、銀行機能を細分化して提供する「組込型金融サービス」をも展開。金融DXの担い手として注目されている。

インタビュー:

GMOあおぞらネット銀行株式会社 細田様
株式会社カルティブ 池田

事業開始前からの導入決定、
決め手は先進的な仕組み。

− まず、GMOあおぞらネット銀行と細田さんの紹介をお願いします。

細田
GMOあおぞらネット銀行は2018年7月に新しいネット銀行として、あおぞら銀行とGMOインターネットグループ、GMOフィナンシャルホールディングスの3社が共同出資し事業を開始しました。多くの銀行は、融資をしてその金利収益を得るビジネスモデルを主としています。例えば、企業への融資や個人のお客様への住宅ローンですね。
そのような中、当社は決済を主力商品として収益を上げるビジネスモデルで、その利便性を向上させるために銀行APIをはじめとした「組込型金融(エンベデッド・ファイナンス)」にも注力しています。
私はネット銀行事業開始の1年前にGMOインターネットから転籍しました。当初は営業部門におりましたが、現在は経営企画や総務といった管理部門を統括しています。

− GMOあおぞらネット銀行とカルティブの出会いを教えてください。

細田
GMOあおぞらネット銀行が事業開始の準備をしている最中に池田さんの前職の企業さまへ営業に伺う機会があり、銀行事業も始まってないため、まだサービスも触れないという状態にも関わらず、「当社を使ってください」と言いに行ったことが最初です。
池田
そのころまだ準備中だったGMOあおぞらネット銀行(当時はあおぞら信託銀行 ネット銀行準備室)のメンバーと私の友人が懇意だったので、紹介されたのがきっかけです。
細田
営業といっても「口座作ってください」という営業ではなく「うちのバーチャル口座を使ってください。近くAPIもご用意します。まだ開発中です」というもので、何もサービスをお見せ出来ない状態にも関わらず、向き合って話を聞いてくださり導入まで決めていただきました。
池田
当時、決済金額が伸びていた「ふるさと納税の自治体振込口座」での利用です。

− 導入を決めたポイントは?

細田
ふるさと納税において、自治体は寄付者の方から寄付を受け付ける時に、クレジットカードや携帯払い、コンビニ払いなどの決済の整備をします。しかし、「まだ現金を使いたい」という寄付者が一定数いらっしゃって、現金で振り込みの要望があります。
その時、何が起こるかというと、旦那さんが寄付の申し込みをしたけど、お金は奥さんが振り込む。その結果、自治体側はその入金がどの寄付者からの申し込みの入金かがわからなくなります。各自治体のふるさと納税部署には「誰の寄付に対する振り込みなのかわからない入金一覧のリスト」ができているんです。
自治体職員さんは、時間をかけて「この入金はこの人の寄付なのではないか?」と紐付けを行います。しかし、寄付者の奥様や会社名での入金や寄付者が旧姓のまま銀行口座を利用されているということなどもあるため、紐付けは容易ではありません。
そんな時、GMOあおぞらネット銀行が提供を予定していたサービスは、1個の寄付に対して1口座を割り当てることもでき、この先進的な使い方であれば、自治体の問題が解決できると気が付いたのです。

− 導入を決めたポイントは?

細田
これは「振込入金口座(バーチャル口座)」といわれるサービスです。他行さんでも提供されているサービスではあるのですが、月額利用料や1口座あたり発行手数料がかかったりするケースだったり、1000口座まとめて発行し、1000口座単位で返却が必要といいった銀行さんもあるようで、使わなくなった口座にも費用が発生しているといったお声を聞くことがありました。そこで当社は、1口座単位で発行、返却、休止ができるようにしたうえ、2000口座までは無償で提供する商品性にしていました。またそれを超える口座数であってもご相談により無料や安価でのご提供も行います。加えて現在はAPIもご用意していて、システム連携すれば、自動で発行や削除ができるようになっています。
今は多くのお申し込みいただけるようになりましたが、池田さんにお会いした時点では、この話の構想段階でした。
池田
GMOあおぞらネット銀行がまだ準備室の段階だったので、手続きも紙と判子を持って、リアルでやっていましたね。
細田
事業開始前でしたので、口座開設のシステムがオープンしておらず、社内のネットワーク環境からしか接続できないという状況で、ミーティング最中に当社にお越しいただいて口座開設していただきました。事業開始前のゴタゴタの中で当社に寄り添っていただいたのが、ありがたかったです。
池田
面白かったですね。あれは。
池田
ふるさと納税は「各地方自治体さんが地銀を利用しないといけない」などの制約などもあり、銀行に「システム」として導入できる点も利点でした。あくまで寄付者さんの決済手段のひとつとして見せていたのも良かったです。
ちょうど、ネット銀行開始のタイミングだったので、当時私が関わっていたサービス名にちなんだ支店をひとつ作って頂いたのがうれしかったです。商標の確認などしたのも覚えています。

ー それからの経緯をお願いします。

細田
2019年の1月から銀行APIの提供を開始しました。
池田
補足ですが、それ以前は口座の一覧を、89万の銀行口座の情報をテキストでもらいました。それがAPIになったんですね。
細田
そんな時代もありましたね。現在は、銀行APIをオープン化しましたので、APIありきでサービスを作っていただく法人様も多く、ご一緒にお客様のサービスの業務フローやシステム構築を検討するといった、これまでの銀行の営業の形とは違う担当者が多くいます。事業開始前からそういった営業担当者も多く、加えて当社はシステム開発を内製化しているので非常にスピーディかつ柔軟に動けると思います。
池田
当時はこちらは、多くのシステム連携を経験していたメンバーだったのでスピードも早かったと思いますが、GMOあおぞらネット銀行のメンバーも銀行事態を立ち上げる大変な中で銀行APIも一気に作り上げたのだと思います。
私が作る時はなるべく「手離れよく」っていう作り方をします。今は、他の企業の支援の中で「企業版ふるさと納税」もこのノウハウをもって、システム利用しています。企業版ふるさと納税に関してだけはちょっと難しいことが起こっていて、申し込み時は市町広報室の口座で作るんだけど、事業自体は水産課なので水産課の口座に変えてくれという依頼が前日に来るんですよ。そこで自治体に複数部門の口座で受付可能な機能をつけましたが、お互いどうやって技術的な手を抜くかという考え方がシステムをシンプルにする上でも大事なことだと考えています。

新しいこと、他の人ができないこと、求められていること
そこへの挑戦が楽しい

ー 2022年10月にサービスを開始した
ふるさと納税返礼品事業者向け自動スグ払いサービスARLY
について教えてください。

池田
「ARLY(ヨミ:アーリー)」は、GMO あおぞらネット銀行株式会社、株式会社サイバーレコード、株式会社シフトセブンコンサルティング、株式会社カルティブの4社の強みを生かし協働・開発したふるさと納税に係る課題を解決するためにつくられたサービスです。すでに自治体およびふるさと納税返礼品事業者向けに提供を開始しています。サービス開発のきっかけは、GMOあおぞらネット銀行の別の担当の方に、「地域の中小企業さんに法人口座をお持ちいただきたいがどうすればいいですかね?」っていうのが最初にいただいた相談でした。GMOあおぞらネット銀行って大都市圏に口座を持っている方が多いので、それを広げたいんだと説明を受けました。それで「ちょっと困ってるのを解決する方法と組み合わせれば口座作ってくれるんじゃない?」みたいなところから始めました。
細田
ARLYは、2021年の7月頃に、ふるさと納税の返戻品の代金は、自治体から事業者に支払われるまでのタイムラグが相当にあり、資金繰りに苦労されている事業者さんがいるという課題と初期構想について池田さんが当社の別の担当者が話されていた内容を私も聞きまして、「三方良しの素晴らしいサービス!面白い!」って思ったんです。もうその頃は、ビジネス部門から離れて現在の管理部門にいたのですが、全社横断的な対応が必要だったため、私も関与することにしました。
池田
私は2021年10月に金融庁に「こういうプロジェクトを進めてもいいか」という問い合わせに伺いました。特許庁に申請も行ったんですが説明の中で「何ですかこれ?」って説明を求められることも多かったです。当時の資料を私は持っていますよ。
細田
うわ!懐かしい!感動。この資料からブラッシュアップしたんですよね。この資料をベースに社内のローンのチームやリーガル、銀行APIの部門など様々な部署の調整と確認を行いました。
そして、システム的にはこういう繋ぎ方をしなきゃいけないとか、口座がここに2つあってこっちから出金したらこういう流れになるみたいなシミュレーションをずっと行いました。
技術面の相談にも乗れるチームって他行にはなかなかいないので、その点は当社らしさというか、強みですね。
池田
毎度毎度いろんな人が打ち合わせのたびに登場してきたので、楽しかったです。私は他行とのお付き合いもありますが、他行でこの仕組みを構築するのはできないと思いますよ。インターフェースはあるんですけど、こんなに自由に動かせないですし。そういった意味で、GMOあおぞらネット銀行はすごく先進的でいろんな可能性がある銀行だと思っています。
細田
弊社も、このサービスを作るために、銀行APIと立替払い一連をセットにした新たなサービスとして社内で企画承認手続きをしました。当社内も一丸となってどうやったらできるかを各部門が知恵を出し合った結果、承認されて心が躍ったのを覚えています。
池田
そうですね。すごく面白かったです。熱くなりました。
ふるさと納税返礼品事業者向け自動スグ払いサービスARLY(アーリー)サービスサイト

https://cultive.co.jp/arly

池田
ふるさと納税はやっぱり12月がメインなので、12月を越してしまうと、あまり収益にならないんです。なのでローンチは12月に間に合わせたかったんですが、紆余曲折があって間に合いませんでした。なので、来季2023年に向けて今からプロモーションをかけて認知を深めていこうと思っています。
細田
自治体さんにお使いいただくものなので、この点は間に入られる中間事業者であるサイバーレコードさんを私たちも銀行としての役割や技術面でご支援していきます。
池田
ですが本当、ここまで大変でしたが1年後ぐらいには笑えるんじゃないかなと思っています。
細田
そうですね。来年笑いましょう。

ー プロジェクトの「楽しさ」をどこに感じますか?

池田
 「新しいことをやる」っていうのがもちろんそうなんですけど「他の人ができないことをやる」っていう点もですね。そして地域とか、地域の生産者・事業者が求めてるものだっていうのもよくわかっているので「求められてるものを作っている」というのがすごく楽しい。細田さんの力もないともちろんできないし、地域の力とかもないとできないし、すごい絶妙なバランスの中で、どこが欠けても多分できなかったっていうのもすごい楽しいポイントでした。
細田
そうですね。やっぱり「世の中のためになるサービス」という確信が大前提にあります。
あと、池田さんが「話が早い」というのが楽しいです。スピード感があったら勢いを止めないでリリースまでできましたので、そこはやっぱり気持ちいいですよ。

ー ARLYの今後の展開や意気込みを聞かせてください。

池田
ARLYは「使っていただいて初めて良さがわかるサービス」だとよく打ち合わせで話し合っています。なので、より多くの自治体さんに使ってもらいたい。来年以降なるべく多くの自治体に使っていただけるための営業活動、ネットワーク作りをしようかなと思います。
その際に、細田さんのお力添えも必要ですし、あと地域の自治体さんの営業のフロントに立ってるような企業にもご協力いただきながら、進めることになります。
細田
本プロジェクトを進める中で、ふるさと納税の事業者さんが「返礼品にかかる仕入れが先行し、自治体からの返礼品代金の入金を待てずに倒産してしまった」事例があったことを伺いました。このサービスをご利用いただければ悲しい事例は抑止できたのにと思います。ふるさと納税に関わる皆さまの自治体でそういった事例が起きないよう、一つでも多くの自治体に導入されるといいと思います。
私もこのビジネスをつくるにあたって、ふるさと納税をいろいろ調べて、勉強していく中で使命感を得ました。それが地域の事業者のためになるし、自治体さんにもお喜びいただけるはずです。
ちょっとだけ宣伝になりますが、当社の口座を開いていただけたら利便性の良さも体感していただけると思います。銀行に車で行かなくてもパソコンやスマホがあればお取引いただけますのでエコでもありますしね。

ー カルティブに対しての印象を聞かせてください。

細田
私がすごく好きな言葉で「滅私奉公」というのがあるんですが「まず自分の私利私欲を捨てて、社会のために尽くす」という意味です。カルティブさんはそういうビジネスをやっていらっしゃるなって、そこにご協力したいなと思います。
池田
新しいご縁を作っていただいたり、アイデアを話し合ったり、細田さんといるとやっぱり広がりを持てるんですよね。だから、私は一緒にいてうれしい。
細田
池田さんとお話ししている時間は、インプットの時間になってます。
地域の課題や自治体さんのお考え、行動、価値観などを知るきっかけもいただいています。今後ともよろしくお願いします。

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