経済産業省 地域経済産業グループ地域産業基盤整備課
石井係長・日野係長
経済産業省と自治体と民間の思いを伝えたい。
地域課題を解決させるための「本気の熱意」
経済産業省 地域経済産業グループ地域産業基盤整備課
経済産業省における、地域経済の振興を担うセクション。「地域の課題をビジネスの視点で解決する事業者の支援」をミッションとし、今年度は地域の課題と企業のソリューションをマッチングし、ビジネスの種を作るためのイベント開催に取り組んでいる。
インタビュー:
経済産業省 地域経済産業グループ地域産業基盤整備課
石井係長
日野係長
カルティブ 小坪
経済産業省 地域経済産業グループ地域産業基盤整備課
石井係長
日野係長
カルティブ 小坪
熱意の強さが刺激になった。
この企画に参画することが自分を鍛えることに繋がる
− 皆様の自己紹介をお願いします。
- 石井
- 石井と申します。この春より、千葉県君津市から行政事務研修員という形で、経済産業省の地域産業基盤整備課に着任しております。
君津市では、企画課で総合計画や総合戦略などを担当していました。現在は、「地域課題をビジネスの視点で解決する」というミッションの実現に向けて業務を行っております。 - 日野
- 日野と申します。この春より、大阪府岸和田市から行政事務研修員として配属されています。異動になる前は財政課に配属されていました。財政課の予算編成業務を通じて、岸和田市の将来について考えたとき、「人口減少と高齢化が進む中で、このままで本当にいいのか」という問題意識が生まれました。「何か動き出さないといけない!」と思うものの、明確な答えが出ない中で日々モヤモヤとしていたところ、経済産業省への配属が決まりました。現在は自治体が抱える課題をどの様に解決できるか、自治体の視点も交えながら経済産業省のミッションを果たせるよう日々業務に当たっております。
− 経済産業省地域産業基盤整備課の紹介をお願いします。
- 日野
- 大きく分類すると事業の柱は、地域課題解決事業のビジネス化、地域への企業立地の促進、工業用水道施設の整備・強靱化、IT化等
というものです。その中で私たちがいるのは企画班で、ミッションは「地域の課題をビジネスの視点で解決する」ところにあり、そういう事業者の支援が主な活動です。 - 石井
- 私は地域課題の解決に向けて、自治体と企業のマッチング等の業務を行っています。多くの自治体は限られた人材や財源で自ら地域課題を解決しなければならないという意識がありますが、デジタル技術等、企業の持つソリューションを活用することで、従来とは異なる手法で地域課題を解決できる可能性もあります。そのため、自治体が抱える地域課題のオープン化を促し、地域課題解決をビジネスチャンスとして捉えるベンチャー企業や地域外の大企業とのマッチングを推進しています。
- 日野
- 地域課題をビジネス化していくためには、3つのステップがあると考えています。1つ目はビジネスのタネを探す段階で、まさに石井さんがご担当されている業務や、地域課題の発掘が該当します。2つ目は実証段階で、地域課題解決事業モデルの実証が該当します。3つ目は事業化段階で、実証を経て地域課題解決事業が自立化・自走化していく状態が該当します。私は、この2つ目の段階の実証段階の事業者の支援を担当しています。もっと具体的には「地域・企業共生型ビジネス導入・創業促進事業補助金」の執行業務を担当しているところです。
− カルティブとの関わりを教えてください。
- 日野
- 4月にこちらに来て、わけもわからない時期に参加した打ち合わせにいらっしゃいました(笑)。
- 小坪
- この秋、2022年10月18日に大きなイベントを開催するんですけど、その企画会議でした。元々は今年の2月28日に一度、経済産業省と内閣府の共催でイベントを開催したんです。
今回はその第2弾イベントになります。4月にお二人がいらっしゃった時はまだブレストや反省会をしていました。
2月のイベントが好評で、一回で終わるのはもったいない、また何かやりたいなという話になっていました。第1回にはなかった要素を入れようとする中で、新しい意欲的なメンバーの参加を待ってた時に勢いよく手を挙げてくれたと聞いています(笑)。 - 日野
- 研修員としてきているので、やはり「何かを得て岸和田に持ち帰ろう」という気持ちがあります。企業版ふるさと納税というのはやはり、企業と自治体とを結びつける一つの有効な手段なので、そういったノウハウを派遣元に還元したいです。
- 小坪
- 「イベントの開催のノウハウを身につけて自治体に持って帰ってほしい」という目論みありきで参画していただく方を募っていたので、その点が叶ってありがたかったです。
- 石井
- 私はまず最初の打ち合わせが非常に印象的でした。
小坪さんやもう一人のアドバイザーの塚本さんの熱意の強さが刺激になったんです。加えて、この企画とは別に実施している自治体と企業のマッチングに係る事業を推進する上でも、この経験で得られるノウハウは活用できると考えました。
− 知り合ってからの取り組みを教えてください。
- 小坪
- 5月末に山形県の西川町に現地視察に行きました。
「地域の優良企業と一緒に地域の課題を見てこよう」ってコンセプトで、この3人+新朝プレスの高嶋さんで。 - 石井
- 「地域未来牽引企業」という経産省で選定している地域経済の中心的な担い手となりうる企業さんを訪問しました。また、企業と連携した取組に熱心な西川町が抱えている課題や魅力などについて、職員の方に実際に現地をご案内いただきながらご説明いただきました。西川町は廃校など運営されていない施設の活用に課題がある一方、夏までスキーができるなど豊富な地域資源を持っており、観光地としてのポテンシャルの高さも感じました。小坪さんは本当に熱心に質問をされているのが印象的でした。
- 日野
- 人口減少や高齢化率を表すグラフなど、机上のデータで地域の状況を把握する機会は多いですけど、実際に現地に訪問することで、体感することの重要性を痛感しました。
例えば「高齢化率約46%」という数値の切実さは現地に行くことで本当に身に染みます。
そんな課題が山積する自治体であっても、職員の皆さんが「諦めない」「変えていこう」とする姿勢に学ぶものがありましたし、小坪さんの企業版ふるさと納税の講義も非常に勉強になりました。
自治体の受け皿としての能力を磨く「はっしん道場」に、
自治体と主催者の「本気」がある。
− 2022年2月28日に開催されたイベントについて教えてください。
- 小坪
- 2021年の秋に、内閣府で「地方創生SDGS官民連携プラットフォーム」の年次総会が開催されており、私はそこで「企業版ふるさと納税」をテーマに話をしたんです。
そこに、塩手さんという、7月までお二人の上司だった方が参加してくださっていました。企業版ふるさと納税がこの地域産業基盤整備課の「地域の課題を企業の力で解決するための一つの有効なツールになるだろう」というふうに考えてくださり「企業版ふるさと納税」がキーになって地域産業基盤整備課と私とのお付き合いが始まりました。
別軸で、内閣府は、企業版ふるさと納税を活用した自治体と企業のマッチング会を開催しているんです。それぞれの自治体がプレゼンして、企業の寄附を誘致するようなイベントですが、これを経産省の共催で一緒にやってみたのが2月28日のイベントでした。カルティブ社およびriver連携企業は、このイベントに企画・運営の協力企業として参画しました。 - こちらのイベントは「企業版ふるさと納税」のマッチングに振り切っていましたが、イベントを振り返る中で「”地域の課題を民間のビジネスの力で解決する手段”はそこにこだわり過ぎなくてもいいのではないか」
というアイデアに至りました。10月18日のイベントでは、地域の自治体につながりたい企業がいろいろな形で課題解決に関わっていくツールの一つが「企業版ふるさと納税」という位置付けです。 - 石井
- やはり地域課題をビジネスで解決するような取り組みは、最初はなかなかマネタイズが難しいという課題があるなか、「企業版ふるさと納税」は資金面で効果的なツールです。
ただ、寄附をもらうのは容易ではなくて、企業が自治体の事業に理解を示していただき協力する、相互にいい関係を築いていただくのが前提になります。
ただ「寄附をしてください」というマッチングではなく、「まずは一緒に話し合ってみませんか」という場づくりのきっかけとなるイベントにできればと考えています。 - 小坪
- 自治体の受け皿としての能力も官民連携においてはすごく重要で、「自分たちは企業に声をかけてもらったらどういうことができるのか」とか、「何のために企業と連携したいのか」「どんな町にしたいか」とか、こう言ったことをちゃんと伝えられるようなプレゼンにしていきましょうというのが今回のポイントです。
コンテンツ面や見せ方を磨き上げたものを届けられるようなイベントにしたい。
なので今回は「はっしん道場」という会を設けました。
− はっしん道場?
- 日野
- はっしん道場とは、地域の課題を「発信」し、課題の解決に向けて「発進」していく、そんなアツい自治体をみんなで鍛え上げていこうという会です。自治体のプレゼンコンテンツやプレゼン能力を高めるため、企業の管理職や役員にもご参加いただき、企業目線でプレゼンに対してコメントをもらったり、経済産業省や内閣府、riverといった事務局メンバー、時には道場参加自治体同士でも意見交換をしたりしています。時には厳しいツッコミも入りますが、参加者全員が真剣に「はっしん」しており、非常に盛り上がっています。
- 小坪
- 8月の第2回道場は30名が7時間にわたって参加して頭を一日中フル回転させていました。
1自治体が1時間ずつ動画によるプレゼンとフィードバックを繰り返して、みんな相当大変だったはずなんですが「勉強になった」という声も多数いただきありがたかったです。
オンラインではあるものの、本格的な合宿研修でした。フィードバックをするのも一流の企業の管理職や役員ばかりです。ものすごい量のフィードバックがあるのでどこまで咀嚼できるか懸念ではありますが、次回9月の道場が楽しみです。それくらい本気で打ち込んでいます。 - 石井
- 応募される自治体も皆すごいモチベーションをお持ちです。実は応募にはプレゼン動画の提出が必要なのですが、そもそもそれが自治体的にはハードルが高いんです。
- 小坪
- 申し込みフォームもざっくりしたフリーフォーマットにしていて、企業で行われる自由公募に近いような提案力とやる気が試される形式にしました。
- 石井
- そこをしっかりやって応募してくださった自治体なので、はっしん道場に参加している自治体の官民共創に対する熱意は非常に高いと感じています。
- 小坪
- 我々も自治体も本気で取り組んでいますので、ぜひ10月18日のイベント本番にはたくさんのご参加をいただきたいです。
− 今回のイベントに参加して欲しい企業を教えてください。
- 石井
- 企業にとっても、社会貢献の機会、ビジネスチャンスは山積する地域課題に埋もれていると思います。一つの自治体と連携して実施した事業を、同じ悩みを持つ自治体に横展開することができれば、収益的にも大きなものになると考えております。自治体と連携・共創して地域課題をビジネスの視点で解決したい企業、企業版ふるさと納税の活用を検討されている企業にご参加をお待ちしております。
「地域の課題をビジネスで解決し、経済を循環させる」
世界観が全く一緒だから、全力で伴走できる。
− カルティブにどういう印象をお持ちですか。
- 石井
- このイベントもそうですし、他の企業に頼めないようなことを快く引き受けていただいているんです。委託・受託とかではなくイベントの開催や制度のブレストなど、アドバイザーとしてずっと伴走してくださっていて、本当にありがたく感じています。
- 小坪
- 確かに、直接の収益の関係はありません。でも、我々がriverやカルティブで実現したい社会やゴールと、地域産業基盤整備課が目指している社会って、世界観が全く一緒で「地域の課題をビジネスで解決し、経済を循環させる」という点において合致しているんです。なので、共通のゴールに向かって一緒に活動している気持ちになれる。経産省さんが地域に対して働きかけていることは、我々からしても「地域に絶対必要なもの」だと解釈している。そうである以上、「全力で一緒にやりたい」というだけなんです。
- 石井
- 私の感覚で言ったら委託・受託という関係でお願いすべきところを、前向きに捉えて、かなり早いレスポンスで対応してくださっているんです。
- 小坪
- 地域にとってメリットがあることなので、riverのメンバーも快く応じてくれています。皆地域愛が深いですし。
- 日野
- 思いの部分で共通しているんだと感じます。いい意味でお互い遠慮なく意見を言い合うことができるので、イベントもいい方向に進んでいる実感を持てています。
また、小坪さんのように、行政ではない民間の方と一緒に受注や受託の関係外で仕事する機会というのがこれまでにあまりなかったので、フラットに意見交換してくる関係はすごい新鮮な感覚です。
− 10月のイベントに対しての意気込みを聞かせてください。
- 石井
- 自治体、企業、参加される皆様にとって本当にいい機会を提供したいです。自治体にとっては、地域課題の解決につながる機会にしたいですし、企業にとってもビジネスチャンスなどの価値を生めたらと考えています。また、このイベントをとおして、自治体と企業が連携・共創することで、地域課題を解決するという意識を醸成できるようなイベントにしていきたいです。
- 日野
- 経産省、内閣府、river、自治体、それぞれの思いが詰まった、いいイベントにしたいです。はっしん道場や今回のイベント企画を通じて地域課題のオープン化にはアツい思いが大切だと改めて感じているところですが、特にはっしん道場で鍛えられた6自治体の熱量は半端ないので、そのアツい思いが他の自治体にも波及していけばよいなと思います。
- 小坪
- 事前準備をここまで入念にやるイベントもなかなかないですよね。
内容の作り込み方に自治体の本気度はきっと顕れます。自治体が自分達の課題や思いを主体的に力強く出して、マッチングに至った時、それは一つの象徴になり得ます。
なので、このイベントが経産省にとっても、内閣府にとっても、一つのベンチマークになればよいなと思っています。
− イベントの後の連携で何を創出していきたいかを聞かせてください。
- 小坪
- 「地域の課題を解決したい、そのために民間の力を入れていきたい」目指すものはその一点に尽きます。今回のイベントの結果として得られるものを今後の活動や制度設計にどう還元させるかが、大きな課題になります。
我々は連携して、オープン型プラットフォームとしてのイノベーションになるまで、繰り返し検証していきたいです。 - 石井
- 今日お話しして、地域産業基盤整備課とカルティブの思いの部分の一致を改めて感じました。
今回のイベントの結果を踏まえながら、今後も「地域課題をビジネスで解決する」という取り組みを拡げていきたいです。 - 日野
- 地域課題は、企業と自治体の目線を合わせないとうまく解決に至りません。
マッチングイベントやはっしん道場などを通じて我々がやっていることは、その目線の調整とも言えます。これからもそんな取り組みを続けて、地域課題の解決に繋げていきたいです。
2022年09月
経済産業省にて