インタビュー

株式会社カルティブ ー 内閣官房 地域未来戦略本部事務局

内閣官房 地域未来戦略本部事務局

現場の声を拾い、信頼でつなぐ。
企業版ふるさと納税で切り拓く官民連携と地方創生の未来

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内閣官房 地域未来戦略本部

地方の持つ成長余地を活かしながら、国民の暮らしと安全を守ることを目的として、2025年11月に内閣に設置された組織。「新しい地方経済・生活環境創生本部」の廃止に伴い、その後継機関として発足した。地域ごとの産業形成を全国で進め、技術やビジネスの創出を目指すとともに、地場産業の高付加価値化や販路開拓を強力に支援するための検討を担う。関係省庁横断で政策を推進する体制となっている。

インタビュー
内閣官房地域未来戦略本部事務局
内閣府地方創生推進事務局
加賀様、山中様、西村様、小林様
カルティブ
池田、竹村

現場の本音を集め制度改善へ活かす、
地方創生の心強いパートナー。

まず「地域未来戦略本部事務局」についてご説明をお願いします。

加賀
高市内閣の発足に伴い2025年11月に新しく発足した組織です。これまで内閣官房が進めてきた地方創生の取り組みを継承しつつ、新たに産業分野にも力を入れ「地域未来戦略」と銘打って展開していくための事務局になります。これから検討する課題も多い面もあります。

皆様がカルティブと最初にお会いしたのは、発足当時ですか?

加賀
いえ、もっと前です。安倍総理の下で取り組んでいた「まち・ひと・しごと創生本部」の頃と伺っています。岸田総理の下では「デジタル田園都市国家構想」で、石破総理は「新しい地方経済・生活環境創生本部」と「地方創生2.0」を掲げていました。総理が変わると事務局の名称が変わっていますが、地方創生の流れを汲んでいる組織です。
池田
私は2017〜2018年頃、2020年度税制改正に向けた議論の中で関わらせていただいたのが最初です。当時は個人版ふるさと納税を担当していて、「(個人版)ふるさと納税は伸びているのに、なぜ企業版ふるさと納税は伸びないのか」という課題について、当時の山崎俊巳審議官からご相談いただいたのが始まりでした。

今、内閣府にいらっしゃる方では、山中さんが一番長いご縁になりますが、皆様と同じ温度感でお付き合いさせていただいています。打ち合わせでは必ず笑いが起き、いつも興味深い情報をいただきながら、楽しく意見交換をしています。内閣府の皆様の出席人数も驚くほど多くて、ありがたいです。

具体的に、カルティブはどのように関わっているのでしょうか。

池田
私たちは、地方創生の手段の一つである企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)を市場に広げていくための活動をしています。その中で、「私たちはこう考えています」「地域ではこういう声があります」といった情報を共有しながら、月1回の情報交換をさせていただいています。自治体や企業の意見を吸い上げて共有する、ハブの役割も担っています。

実際、内閣府の方が地方を訪れても、本音が言えないケースは少なくありません。民間企業である私たちが「何かお困りごとはありますか」「どのように制度を活用したいですか」とお聞きすると、率直に話していただけることがあります。そうした意見が制度改善や政策に反映される可能性もあるので、こちらから提案をさせていただくこともあります。
山中
私たちだけでは拾いきれない現場の生の声を、深く入り込んで収集し、情報交換させていただく中で、政策に反映させていただくこともございます。
小林
自治体の方々とも非常に密に意見交換をされていて、自治体の皆さんが直接内閣府には伝えにくい感情も含めて、うまく翻訳する技術をお持ちだと感じています。本当に勉強になります。

内閣府の皆様から見たカルティブや池田さんへの印象はいかがですか?

西村
私は最近このプロジェクトに参画したのですが、個人的にも関心があって、初対面のときに自治体の訪問に同行させていただきました。昨年11月のことです。
その際、自治体とのやり取りを間近で見て、池田さんのキャラクターもあるんですが、どんな方ともすぐに打ち解けて話ができるうえに、知見が広く、しかも深い。その上で、配慮や意見がとてもきめ細やかだと感じました。その一方で、「プラットフォームの利用については自由にしてくださって大丈夫ですよ」という寛容な姿勢もあり、その懐の深さが印象的でした。
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加賀
私は昨年度はあまりやり取りする機会が多くなかったのですが、今年度に入ってからカルティブさんとの定期的な意見交換に参加させてもらうようになりました。池田さんからいただく、さまざまな切り口の情報は、制度の内容や周知方法を検討するときに「そういえば」と思い起こされることがたびたびあります。
最近は、自治体や企業から内閣府に対しても問い合わせが非常に多い中で、カルティブさんは、制度理解が深まるよう丁寧に応対していると思います。私たちの手が届かないところで、大きな役割を果たしてくださっているのだと、見えない部分で尽力を感じています。

地方創生制度の解釈を時に厳格に示す。
それが安心感を生む。

民間から意見をいただくためのコツはあるんですか?

池田
寄付の検討をされている民間企業は、制度利用について複数の事業者に相談して比較されることがあります。最近ご相談いただいた企業からも、「3〜4社と相談した結果、カルティブを選んだ」とおっしゃっていただきました。ちゃんと見比べられているんです。ちょうど今しがた寄付をご検討中の企業からも「御社の考え方に共感したので、一緒にやりたいです」というご連絡をいただきました。

「こういうアイデアを活かしたい」「こういう地域貢献をしたい」といったご相談に対して、私たちは制度の適用外であれば、はっきり「それは企業版ふるさと納税制度を活用しての取り組みは難しいです」とお伝えします。企業によっては、それを「考え方が固い」と受け取られることもあります。そうした中で、「制度解釈が厳格だ」という印象を持たれることもあります。

ただ、裏を返せば、それは安心感や信頼につながると考えています。結果として、自治体も企業も、同じ価値観を持つ相手同士で結びついていきます。

制度を適切に活用することで、地域が変わり、人の流れが変わり、産業が変わり、社会課題の解決にもつながる。活用の幅が非常に広い制度だからこそ、しっかりルールやイメージを守る必要があります。世間からのイメージが悪くなれば、正しく活用している方々にも迷惑がかかってしまう。そこは強く意識しています。
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カルティブの強みをどこに感じますか?

山中
前提として、カルティブは企業版ふるさと納税の中間支援事業者の中でも、かなり早い段階から取り組まれていらっしゃったと認識しています。ただ、私が事務局へ来た当初はなかなか一緒にお仕事をさせていただく機会がなかなか無かったのですが、その後、カルティブが開催しているイベントへの登壇のお誘いを受けました。企業版ふるさと納税の人材派遣型制度について、企業向けに1日、自治体向けに1日という形で実施しました。その際、企業版ふるさと納税に限らず、さまざまなセミナーやイベントを幅広く開催されていることを知り、その活動の広さに驚きました。
西村
池田さんの、フラットで本当に話しやすい雰囲気と、制度理解の深さはすごいです。私たちも制度活用について自治体にアドバイスする機会はありますが、自治体の現場での書類作成手順の課題や、それをシステムでどう自動化できるかといったところまで踏み込んでおられる。カジュアルさと、深さと、詳しさと、きめ細やかさを兼ね備えていると感じます。
池田
ありがとうございます。もともとシステム屋なので、システム周りを褒めていただけるのはうれしいです。自治体でも企業でも、皆さん何かしら課題を抱えていて、「この業務が大変なんです」「この作業が面倒なんです」という声をよく聞きます。そうすると、自然に「じゃあ、それをなくしていきましょう」という話になります。
「詳しく知っている」というよりも、「相談を受けて、問題を一つずつ解決していく中で知見が積み重なってきた」というほうが近いかもしれません。あらかじめ決まった仕様をウォーターフォールで実装するのではなく、ユーザーファーストで、本当に必要なものを作っていく。その姿勢を大事にしています。
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カルティブからみたこのチームの強さを教えてください。

池田
内閣府含め省庁の組織体質って、参事官の影響をものすごく受けるんです。参事官によって、チームの空気は大きく変わります。現在の大瀧参事官は、比較的オープンに、躍動感を持って進めていくタイプの方なので、その気質がこの組織の雰囲気の良さにつながっていると感じます。
民間との会議にほとんど出ない参事官もいらっしゃいますし、本当にその方次第で対応は違います。これは良し悪しではなく、文化だと捉えています。
それと、内閣府や省庁にお勤めの方は、とにかく書類を読む能力が高いんですよ。制度であったり専門的な文書であっても一読しただけで、すぐ内容を熟知しているように話される。あの処理能力は、本当にすごいです。

この取り組みの中でゴールとして目指してるものはありますか?

山中
更なる普及促進です。毎年、企業版ふるさと納税の寄付実績を公表していますが、寄付額と寄付件数は右肩上がりに伸びています。一方で、寄付企業数そのものの伸びは、それに比べるとまだ緩やかです。より多くの企業に制度を活用していただけるよう、しっかり周知していく必要がある。それが私たちの当面のミッションだと認識しています。
池田
地方創生に絶対必要なものの一つが「地域外の力」です。地域内だけですべてを完結させるのは、やはり難しい。地域が抱える課題に対して、外部から支援していく要素の一つとして企業があります。

企業は、資金、人材、資材など、さまざまな資源を持っています。そうした要素が地域の中で化学変化を起こすことで、地方創生につながっていく。その化学変化を生み出すツールの一つが企業版ふるさと納税です。だからこそ、それをより多くの人に使っていただけるようにすることが、カルティブの目指すところです。

その上で障壁とか難しさはどこにありますか?

山中
更なる普及促進です。毎年、企業版ふるさと納税の寄付実績を公表していますが、寄付額と寄付件数は右肩上がりに伸びています。一方で、寄付企業数そのものの伸びは、それに比べるとまだ緩やかです。より多くの企業に制度を活用していただけるよう、しっかり周知していく必要がある。それが私たちの当面のミッションだと認識しています。
加賀
いろいろな使い方があっていいんですが、その中でも推奨できる良い事例を見つけながら、少しずつ制度を育てていけたらいいな、というのが内閣府の考え方です。
また、寄付企業数を伸ばしていくことや認知を広げていくことが、私たちのプロジェクトの枠を超えて、大きな意味での地方創生につながっていけばうれしいです。

もう一つの障壁としては、自治体が解決したい課題と、企業側の「こういう取り組みをしたい」「こういう寄付をしたい」という思いの間に生じる摩擦があります。マッチングの過程では、その熱量や方法論のギャップがしばしば出てきます。制度が成長して活用が広がってきてもその調整が課題になります。
もう一歩踏み込んで言えば「お互いの姿勢が最終的に問われる」ということなのかもしれません。

官民連携の優良事例を積み重ねるやりがいと
その背景にある緊張感。

この取り組みの中でやりがいを感じる瞬間はどこにありますか?

山中
良い事例を見つけたときです。当事務局主催の自治体職員向け研修会等のイベントで、制度の活用にあたって参加者が参考となるような事例を紹介できるよう、常に意識しています。
良い事例をお持ちの自治体や企業に登壇していただくことは、これまでも数多くやってきましたし、今後も継続していきます。また、その年度の優れた事例には大臣表彰もあるので、そこも気にしています。

個人的に一番、印象的だった事例ってあります?

山中
今お話ししたのは、企業と意見交換する中でお話を伺って非常に面白いと感じた事例でした。実際に当事務局主催のイベントでご登壇もいただき、大臣表彰の審査員からも高く評価いただき、最終的に表彰に至ったのですが、自分が注目していた取り組みが表彰されるまでになったときは、やはりとてもうれしいものがあります。
池田
私が印象深かったのは、玉野市と三井E&S造船の事例です。初期の事例の一つで、商業高校に機械科をつくっています。地域の学校に新しい学科をつくるために、自治体に対して企業が寄付を行う。その結果、地域に機械に興味のある若者が集い、その学校から企業への就職の可能性も生まれる。非常にきれいな循環ができていると感じました。
竹村
私は特定の事例というより、マッチングが無事に着地したときに安堵と喜びを感じます。寄付市場自体を活性化するという観点からすると、どんな形であれ、寄付をきちんとつなぎ、自治体にしっかり届けるためのエスコートが私たちの役割です。
自治体と企業、双方の期待値を丁寧に調整しながら、寄付によって両者がしっかり手を取り合えるところまで持っていくのは、実は大変で、そこに至るまでの緊張感は大きいです。
ただ、「この企業なら、評価される事例をつくれるのではないか」と感じさせてくれる場面もあります。そういう出会いはやはり大切です。毎回緊張しながらも、一つひとつ事例を積み重ねていくしかありません。
加賀
私は2025年10月にイベントで制度説明のために登壇したのですが、私とは別の登壇者の一人が、人材派遣型で実際に派遣された企業の方だったんです。大阪府のとある市のプロジェクトでしたが、その方が「企業版ふるさと納税の人材派遣型は、本当に良い制度なんですよ」とプレゼンされていて、お客様の反応も非常に良かった。ああいう形で広がっていくのは、すごくありがたく、強く印象に残っています。
西村
池田さんと自治体を訪問した時、自治体の方が「企業版ふるさと納税の担当になったとしても、どこから動き始めればいいかわからない」と池田さんに質問されていたんです。そのとき池田さんが、「まずは、自分の自治体が今持っている関係性や事業を棚卸しするところから始めましょう」とお話しされていて、それがとても印象に残りました。

「今ある関係性をまず大切にする」ということが、官民連携の基本であり、鍵なのだと改めて感じました。自治体の方からすると、官民連携はハードルが高く見えるかもしれませんが、肩の力を抜いて「まず相談してみよう」と思える関係を持つことが、最初の一歩なのだと感じました。
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サービスの成長は自分たちだけでは実現できない。
ステークホルダーとの関係の継続が何よりのカギ

カルティブに期待するものはありますか?

山中
カルティブの持つアイデアには、本当に舌を巻くことが多いです。私たちが思いつかない発想が画期的で面白い。制度の成長につながる仕組みをたくさん考えてくださるので、もっともっとトライしてほしいですし、認知も広がってほしいです。自治体の「ほしい物リスト」などは、自治体職員が使いたくなるような仕組みだと思います。
池田
riverのシステムの中で、アメリカの大手ECサイトの「ほしい物リスト」機能を自治体版で提供したんです。自治体がプロジェクトで必要としているもの、たとえば「子どもの教育環境を改善する」というプロジェクトで、学校に「電子黒板」を導入したいとします。でも、それは必ずしも現金で受け取る必要はなくて、現物提供でもいいわけです。

企業側はそのリストを見て、「うちはこれを提供できる」と判断し、実際の提供につながる。この機能は本当に好評で、今も機能として活用されています。
西村
セミナーをとても熱心にやられている印象があります。私たちも研修会などは実施していますが、どうしても制度の勉強会に寄りがちで、「それをどう使うか」というところまで伝えきれないことがあります。その点、カルティブのセミナーは、活用のところまでしっかり届いていて、しかも無料で実施されている。自治体担当者の人材育成にもつながっている非常に良い取り組みだと感じています。
池田
企業版ふるさと納税に関しては、県の皆様と連携しているケースもあります。たとえば奈良県では、動画の作成などでもご協力させていただいています。
小林
自治体の担当者で、企業版ふるさと納税“だけ”を担当している方は多くありません。多くの担当者の方が複数業務を兼務しており、制度の理解や運用にはどうしても時間が必要になるのが実情だと思います。その部分を補助しながら、私たちと自治体との橋渡しもしていただいている。引き続き、ぜひご協力をお願いしたいです。
加賀
先ほどの話とも重なりますが、意見交換の機会を多くいただいていて、現場の話題を通じてこちらも勉強させてもらっています。一方で、最近はこちらからご相談させていただくことも増えてきました。制度について深く理解していただき、内閣府の考え方にも共感したうえで活動されていると感じます。これが、世にいう「有識者」なのかなと(笑)。引き続き、ぜひ連携させていただければありがたいです。
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この取り組みに対しての意気込みなどはありますか?

竹村
カルティブには、自治体コンサルティングなどさまざまな案件がありますが、純粋な自社事業という意味では、現在はriverが中心です。自社サービスは会社のアイデンティティを示すものでもあり、シンボル的存在です。ようやく「カルティブ=企業版ふるさと納税」と認知していただけるようになってきた実感があります。
先ほど加賀さんから「有識者」という言葉をいただきましたが、それはさまざまな関わり、ご縁、つながりの積み重ねがあって、その結果としてそう見ていただいているものです。
「自分たちだけで、世の中のニーズに合った事業をどんどん成長させていく」という姿勢ではなく、私たち、river運営企業、自治体、企業、内閣府を含めたさまざまなステークホルダーとの関係が継続することで、サービスの成長が実現していると考えています。

内閣府の皆さんが感じてくださっている「カルティブらしさ」という視点も、私たちにとっては大切な財産です。事業の成長や制度の浸透はもちろん重要ですが、たとえば急に私たちのスタンスが相手の意図しないものに変わってしまえば、信頼は維持できません。「一緒にやっていきたい」と思っていただける信頼を、つなぎ、維持していく。簡単ではありませんが、大切にしたい姿勢です。
池田
私は、これからもずっと同じ目線で皆様と一緒に、地域や産業を見つめていきたいです。それは、組織の人が変わったからといって変わるものではなく、取り組みの積み重ねによって維持されるものです。変わらず、長く続けられる関係でありたい。そう強く思います。